「見て下さいよ。宍戸さん。」


長太郎が指を指したのは、一軒の屋台。

今日は夏場好例の祭りが開かれていた。


人が多いことをいいことに、俺は長太郎と手を繋ぎっぱなしだ。

こんな幸せなことって無いだろ〜。

でもやっぱり長太郎は結構な鈍感(又は天然)系で。

可愛いものがあればすぐにそっちの方向へ行って…

ゆっくりイチャつけねぇ!!(結局それが目的


さっきは金魚、その前はリンゴ飴…で今度はなんだ?と思ったら

「あの人形…欲しいな…。」

独り言のように呟いて、射的の屋台の前でじっとしている長太郎。

どうやら狙いは、上の方の台においてある人形。


…あれのどこがいいんだ?


長太郎が狙っているのは、たれパ○ダ見たいな目をしたウサギの人形

俺からすればどこがいいのかさっぱり。


「あの…1回挑戦してもいいっすか?」

遠慮気味に聞いてきた長太郎に

「あぁ行ってこいよ!」

と笑顔でかえす。

すると長太郎は嬉しそうに射的のほうへと向かって行った。

その後をゆっくりを追った。


パンッ

パンッ


「…あ、あれ?」
「兄ちゃん惜しいね。後ちょっとなのに。」


屋台のおっちゃんが、なかなか目的のものに弾が当たらない長太郎を慰める。

それにしても…


あいつどこまでノーコンなんだ?!

何であんな大きい的に当てられない?!

1回とかいいながらアイツもう4,5回は軽くやってるぜ。

流石金持ち…じゃなくて…


「貸してみろ。」

「え。」

長太郎の持っていた射的用の銃を取り上げた。


パンッ


それから構えて長太郎の欲しがっていたぬいぐるみを打ち落とす。

もちろん1発で。

我ながら見事な狙い撃ちだと思う。


「うわぁー宍戸さんかっこいいっ!!」

長太郎が拍手をしながら瞳を輝かせていた。

「あーあ、簡単にとられちまったよ。」

そう言っておっちゃんが、困ったように笑って打ち落とした景品をくれた。

やっぱり近くでみても何ともいえない人形…

それを投げるように長太郎に渡して歩き出す。


「貰っちゃっていいんですか?」

せっかく宍戸さんが取ったのに…、とでも言いたそうな表情の長太郎。


誰の為にとってやったと思ってるんだよ。

「そんな激ダサなもん持てるわけねえだろぉが。」


少し強がった感じに言ってみる。


本当は、あんなに物欲しそうなツラしてる奴を俺がシカトするわけない。

しかもそれが長太郎なら尚更。


「ありがとうございます!!」

恥ずかしいと分かっていながらも長太郎は大きな声で俺に礼を言った。


その数秒後にここの祭りのメインイベントの花火が打ち上げ始められた。

夜空を見ながらこっそり周りにもばれないように長太郎ともう一度手を繋いで花火を見た。